バーゼル委、レバレッジ比率の厳格化へ

【市中協議文書】レポ市場の流動性に重大な悪影響か?

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  • ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

サマリー

◆2013年6月26日、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、市中協議文書「改訂されたバーゼルⅢレバレッジ比率の枠組みと開示要件」を公表している(コメント提出期限は2013年9月20日)。


◆市中協議文書は、バーゼルⅢの枠組みに従う銀行が、レバレッジ比率を計算するための特定の定式と、開示要件を定めている。


◆市中協議文書は、原案となるバーゼルⅢテキスト(2010年12月公表)の提案の大枠を維持しながら、エクスポージャー額(分母)の計測方法について、いくつかの変更を提案している。中でも金融業界の関心を惹きつけているのが、レポ取引等の証券金融取引(SFT)の取扱いに関する変更の提案である。


◆SFTのエクスポージャーを会計上のエクスポージャーによる(バーゼルⅡネッティング可)こととしていたバーゼルⅢテキストとは異なり、市中協議文書ではSFTの想定元本(グロスのSFT資産。会計上のネッティングは考慮しない)とカウンターパーティ・エクスポージャー(貸出資産と借入資産の評価差額)の双方を勘案することが提案されている。


◆報道によると、このような変更案が実現した場合、日米欧の大手行は、レポ取引による借入に対し、合わせて少なくとも1800億ドル相当の資本を上乗せする必要が生じるという。こうした影響を回避すべく、銀行がレポ取引によるエクスポージャーの圧縮(デレバレッジ)を模索するであろうことは想像に難くない。それが実際に行われた場合、国債をはじめとするレポ取引の裏付資産(担保)の流動性にも悪影響をもたらすだろう。


◆市中協議文書では、2013年1月から2017年1月までの試行期間において3%の比率をテスト、その試行期間の結果を踏まえて2018年1月から「第1の柱」の下での取扱いに移行することを視野に2017年前半に最終調整をするという実施スケジュールが提案されている(各行によるレバレッジ比率及びその構成要素の開示は2015年1月から)。

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