2013年08月23日
サマリー
◆2013年6月26日、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、市中協議文書「改訂されたバーゼルⅢレバレッジ比率の枠組みと開示要件」を公表している(コメント提出期限は2013年9月20日)。
◆市中協議文書は、バーゼルⅢの枠組みに従う銀行が、レバレッジ比率を計算するための特定の定式と、開示要件を定めている。
◆市中協議文書は、原案となるバーゼルⅢテキスト(2010年12月公表)の提案の大枠を維持しながら、エクスポージャー額(分母)の計測方法について、いくつかの変更を提案している。中でも金融業界の関心を惹きつけているのが、レポ取引等の証券金融取引(SFT)の取扱いに関する変更の提案である。
◆SFTのエクスポージャーを会計上のエクスポージャーによる(バーゼルⅡネッティング可)こととしていたバーゼルⅢテキストとは異なり、市中協議文書ではSFTの想定元本(グロスのSFT資産。会計上のネッティングは考慮しない)とカウンターパーティ・エクスポージャー(貸出資産と借入資産の評価差額)の双方を勘案することが提案されている。
◆報道によると、このような変更案が実現した場合、日米欧の大手行は、レポ取引による借入に対し、合わせて少なくとも1800億ドル相当の資本を上乗せする必要が生じるという。こうした影響を回避すべく、銀行がレポ取引によるエクスポージャーの圧縮(デレバレッジ)を模索するであろうことは想像に難くない。それが実際に行われた場合、国債をはじめとするレポ取引の裏付資産(担保)の流動性にも悪影響をもたらすだろう。
◆市中協議文書では、2013年1月から2017年1月までの試行期間において3%の比率をテスト、その試行期間の結果を踏まえて2018年1月から「第1の柱」の下での取扱いに移行することを視野に2017年前半に最終調整をするという実施スケジュールが提案されている(各行によるレバレッジ比率及びその構成要素の開示は2015年1月から)。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日