2023年11月30日
サマリー
◆2023年10月30日にバイデン米大統領は、AIの安全性に係る大統領令「安全かつ安心で信頼性のあるAIの開発と利用に係る大統領令」(以下、AI大統領令)に署名した。米国ではこれまでに、個別の政府機関による基準が公表されたり、州法レベルでのAI規制が施行されたりしているが、AI大統領令は連邦レベルでの対応の集大成である。
◆AI大統領令は、主に政府機関に基準の策定等の対応を求めるもので、次の実践のための重点項目に分けられる。(1)AIの安全性とセキュリティに係る新しい基準、(2)米国民のプライバシーの保護、(3)公平性と市民権の推進、(4)消費者・患者・学生の保護、(5)労働者の支援、(6)イノベーションと競争の促進、(7)諸外国における米国のリーダーシップの強化、(8)連邦政府による効率的かつ責任あるAIの利用の保証。
◆民間企業においては、AIの開発に際し、政府機関に安全性テストの報告等が必要になる。ただし、EUのAI規制(案)のように一部のAIの開発・利用を禁止するものではなく、AI大統領令は政府機関が策定する基準やベストプラクティスに基づいた対応を求めるにとどまる。
◆米国議会ではAI規制に係る法整備が進められており、2023年11月15日に上院で超党派の法案が提出された。これは、AI大統領令からさらに踏み込んだ内容であり、法案の成立も含め、今後の動向が注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
生成AI(LLM)の進展と今後の動向
企業として活用する上での留意点
2023年11月21日
-
インフラサービスの安定的な提供のため事業者に求められる対応
自らリスク評価を行い、リスク管理措置を実施することが求められる
2023年05月12日
同じカテゴリの最新レポート
-
株主提案天国は終了か?:テキサス州法改正
株主提案権制度をSEC規則による規制から州法による規制に変える
2025年05月19日
-
東証投資単位引き下げで変わる株主総会
議決権1つの価格が下がれば、株主提案権も「大安売り」に
2025年04月28日
-
社外取締役の選任状況から見る課題と対応
取締役会のスリム化、兼任を含む企業ごとのアプローチの検討が必要
2025年04月11日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日