サマリー
◆2026年6月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+5.7万人と3カ月連続で減速し、市場予想(Bloomberg調査:同+11.3万人)を大幅に下回った。また、雇用者数の過去分については下方修正された。失業率については、2026年6月は同▲0.1%ptと低下し、4.2%と2025年6月以来の低水準となった。もっとも、失業率の低下は労働力人口の急減が主因である可能性に留意する必要がある。6月の雇用統計は、雇用者数の減速を中心に、足元の雇用環境の改善ペースが緩やかにとどまっていることを示唆している。
◆前月公表分までの雇用統計では、力強い雇用者数を示す事業所調査と、相対的に弱い雇用環境を示唆するその他の雇用関連指標との間で乖離が生じていた。しかし、今回の雇用統計は、雇用者数が他の雇用関連指標に沿う形で、収斂する結果になった。BLSの民間部門雇用者数は、均してみればADP民間部門雇用者数の増加ペースを上回って推移していたが、今回の雇用統計における過去分の下方修正と6月分の減速に伴い、両者は収斂した。また、6月の雇用者数の減速は、先行する傾向のある雇用関連のマインド指標とも整合性が取れている。
◆6月の雇用者数は減速したとはいえ、2026年以降の雇用者数の伸びは、失業率を変動させない雇用者数の増加ペースである「ブレークイーブン雇用」を平均的に上回ってきたとみられる。こうした中で、失業率がタイムラグを伴って低下すること自体に違和感はない。ただし、先述のように6月の失業率低下は労働供給の抑制が主因とみられることや、事業所調査における雇用者数が減速傾向にあること等を踏まえれば、先行きも6月の失業率で見られたような改善傾向が継続することは期待しづらいだろう。
◆最後に金融政策について、6月の雇用統計では雇用環境の改善ペースが緩やかにとどまっていることが示され、市場の利上げ織り込みは低下した。先行きの金融政策決定はインフレ次第となるが、ウォーシュFRB議長は2026年7月1日に行われたECBフォーラムにおいて、過去数週間でインフレリスクは低下したと指摘した。7月14日に公表予定のCPI等の物価指標を確認する必要があるものの、2026年7月28日・29日のFOMCにおいては、今回の雇用統計とウォーシュ議長の上記発言を踏まえ、現時点では金利据え置きによる様子見に傾きやすいとみられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米雇用者数は反動増もある中で大幅な伸び
2026年8月米雇用統計:雇用環境は底堅い一方、賃金上昇率は減速
2026年09月07日
-
なぜ米長期債・超長期債利回りは高止まりしているのか?
米国債への資金フローが構造的に変化
2026年09月04日
-
米国経済見通し 中東情勢と金利高止まりが景気の重石に
米・イランは歩み寄りの可能性も、金利高止まりは解決しづらい
2026年08月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

