サマリー
◆米雇用統計の雇用者数は、毎月収集される企業向けのアンケート(事業所調査)をもとに算出される。ただし、BLS(米労働統計局)はこの調査では把握しきれない開廃業による雇用者数の変動は「出生・死亡モデル」における推計(以下、出生・死亡予測値)で補っている。近年では、出生・死亡予測値が雇用統計の結果に歪みをもたらし得ると注目されてきた。
◆出生・死亡予測値は、コロナ禍を背景とした経済変動を受け、雇用者数の過大推計の一因になっていると指摘されていた。こうした懸念に対応するため、BLSは2026年2月に出生・死亡予測値の推計方式を変更した。新方式による出生・死亡予測値の改訂値(2025年4-10月分)は、従来方式を適用した場合の改訂値よりも▲12.4万人分少なかった。すなわち、推計方式の変更だけで、雇用者数を月平均で▲2万人弱下方修正した計算になる。新方式の導入により雇用者数の継続的な過大推計が改善され、今後想定される下方修正幅が小さくなることが期待される。
◆もっとも、新方式の推計により雇用者数の単月での振れが大きくなり得る点が、新たな課題として懸念されている。2026年1・2月は教育・医療において出生・死亡予測値が過去の傾向から外れる動きを見せており、雇用者数の増減に影響した可能性がある。教育・医療の出生・死亡予測値の振れが雇用者数(季節調整後)に与えた影響を試算すると、1月分は概ね+3万人押し上げ、2月分は▲1万人弱押し下げられた。他方で、2026年3月分については、出生・死亡予測値に過度な変動は見られなかった。影響が必ずしも一方向ではないことが、出生・死亡予測値の評価を難しくしている。
◆以上の懸念がある中、雇用者数の基調を判断する上で、出生・死亡予測値を取り除いたデータや民間部門雇用者数(除く教育・医療)が参考指標となる。これらの参考指標を踏まえて足元で雇用者数を評価すると、直近で回復の兆しが見られる一方、より長い目で見れば過去数年のレンジ内で横ばい圏での推移といえ、現時点では横ばいから回復基調への転換の狭間に位置すると評価できる。統計作成上の歪みを考慮するために、本稿で取り上げた参考指標も含め、幅広い指標を用いて雇用情勢の基調を慎重に見極める必要があろう。
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