サマリー
◆2026年3月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+17.8万人とプラスに転じ、市場予想(Bloomberg調査:同+6.5万人)を大幅に上回った。また、失業率については、2026年3月は前月差▲0.1%ptの4.3%と低下し、市場予想(Bloomberg調査:4.4%)を下回った(改善)。
◆もっとも、3月の雇用者数については、2月の悪天候や医療従事者等のストライキといった特殊要因がはく落したことによる反動増が主因とみられる。また雇用者数のうち景気動向に敏感な民間部門雇用者数(除く教育・医療)もプラスに転じたものの、均してみれば緩やかな回復に留まる。失業率の低下についても、労働供給の抑制による影響が大きい。失業率は安定しているものの、必ずしも労働需要の強さを示しているわけではない。総じてみると、雇用環境は回復の兆候を示しているとはいえ、過度な楽観は避けるべきだろう。
◆雇用環境の先行きについては不確実性が高まっている。トランプ減税2.0やFRBがこれまでに実施した利下げが景気の下支え要因となっている。一方、レジャーシーズンを控える中で、中東情勢の悪化に伴いエネルギー価格が上昇しており、ガソリン価格の高騰を通じて景気の抑制要因となり得る。さらに、AIの活用等を理由としたコストカットを公表する企業が相次いでおり、雇用環境への悪影響が顕在化する可能性がある。コスト高を背景に、企業によるコストカットが広がりを見せることで、雇用環境の回復の重石となる可能性があるだろう。
◆最後に金融政策について、2026年3月17・18日に開催されたFOMCでは金利が据え置きとなった。FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は、中東情勢の悪化を背景に先行きは非常に不透明であると強調した。エネルギー価格の高騰に伴うインフレ懸念が強まる中で、雇用環境が底堅く推移すれば、FRBに様子見の余地を与えることになる。今回の雇用統計は雇用環境の悪化が進んでいないことが示され、目先は金利の据え置きが続きやすいと考えられる。
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