サマリー
◆2025年の米国経済は、トランプ第二次政権下での関税強化という逆風に直面しつつも、実質GDP成長率は前年比+2.1%を見込んでおり、予想以上に底堅く推移している。ただし、その内実は一様ではなかった。高所得層の消費やAI関連投資が景気を支える一方、低・中所得層の消費や中小企業・非AI分野の投資は低迷する「K字経済」(上昇する層と停滞・悪化する層が分岐する様子をアルファベットの“K”に例えた表現)が鮮明となった。
◆2026年については、利下げや減税効果を背景に実質GDP成長率は前年比+2.4%と緩やかな回復が見込まれるものの、「K字経済」の構図は継続する可能性が高い。減税は高所得層に恩恵が集中し、低・中所得層向け社会保障削減が消費回復の重石となる見通しである。また、トランプ政権下で公表された民間企業の投資計画はAI偏重であり、非AI分野の設備投資に波及する見込みは小さい。
◆「K字経済」における下側の回復は緩慢であり、高所得層の消費やAI関連投資による「片輪走行」の様相が続く中、仮に株価の調整やAI投資に期待外れが生じた場合には、景気の下振れリスクが顕在化しやすい。こうした中、景気下支え策への期待は引き続き大きい。迅速な対応が可能な金融政策に着目すると、インフレが加速しやすい1-3月期は金利据え置きも、4-6月期以降は計0.50%pt程度の利下げを行うことが想定される。
◆2026年の米国経済を巡るリスク要因としては、追加関税措置の再強化が挙げられる。ただし中間選挙を控え、景気を悪化させ得る追加関税措置は難しく、国家緊急経済権限法(IEEPA)裁判の影響で国別の追加関税は無効化される可能性もある。追加関税措置のマイルド化は景気に対してポジティブだが、財政悪化リスクは高まる。財政悪化リスクを反映し、米10年債利回りが高止まりする可能性がある中で、トランプ大統領はFRBに利下げ圧力を強め得る。FRB次期議長の下で、FRBが景気を十分に考慮せずに利下げを強行すれば、インフレの再燃や、高止まりする恐れがあるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米DTCC、トークン化株式の本番取引を開始
証券トークン化、ウォール街の基幹的なポストトレード業務へ移行
2026年10月08日
-
米雇用者数は大幅減速、過去分も下方修正
2026年9月米雇用統計:ただし、均してみれば雇用環境は底堅い
2026年10月05日
-
米長期金利を押し上げる利上げ織り込み加速は妥当か
むしろ警戒すべきは金融環境のタイト化による景気のオーバーキル
2026年10月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日

