FRBの利下げペースを左右する要因は何か?

失業率が上昇すれば利下げペースは速まるが、求人率が高止まりするケースに注意

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2024年08月07日

  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆FRBが想定してきたソフトランディング・シナリオを達成するためには、利下げの実施により景気や労働市場が底堅さを維持する中でも、インフレ減速が継続していく必要がある。コアPCE価格指数は労働需給の緩和と概ね連動して減速してきており、インフレ減速が継続するためには、さらなる労働需給の緩和が必要といえる。ただし、ソフトランディングを実現するためには、労働需要の縮小ではなく、労働供給の拡大を中心とした労働需給の緩和が続いていくことが求められる。

◆労働供給の拡大要因として今後も期待できるのは移民流入である。過去1年間の米国外生まれ労働力人口(移民労働者)の増加ペースを維持することができれば、ソフトランディングに必要な労働需給の緩和を労働供給の拡大を中心に達成することも可能と考えられる。ただし、大統領選挙を控えて、バイデン政権は移民規制を進めており、先行きの移民流入ペースについては不確実性が高いことには注意が必要となる。

◆他方で、足元は失業率が上昇しやすくなっているとみられ、FOMC参加者の想定以上に失業率が上昇していくことで労働需給が緩和することも考えられる。失業率が上昇しやすくなっている背景として、①求人率の低下によるベバリッジ曲線からの示唆、②不法移民の流入に起因する労働市場のミスマッチ拡大の可能性、③移民の急増に伴う短期の均衡雇用者増加数の上昇、の3点が挙げられる。

◆金融政策への示唆について、これまで通り労働供給の拡大を中心とした労働需給の緩和が当面継続するシナリオでは、ドットチャートの中央値で示唆されるようなペースで利下げが継続していくと考えられる。他方、失業率の上昇を伴いながら労働需給が緩和していくシナリオでは、基本的にはFRBによる利下げペースは速まることが想定される。ただし、後者のシナリオで注意が必要なのは、雇用のミスマッチの拡大により失業率が上昇する一方で、求人率が高止まりするケースだ。労働需給が緩和したとしても、求人率が高止まりすればインフレも高止まりする可能性は否定できない。この場合、FRBはインフレ高止まりと失業率上昇の板挟みとなり、金利据え置きと利下げの間で難しい判断を迫られることになるだろう。

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