サマリー
◆雇用環境が底堅く推移する一方、6月のCPIが減速したことで、市場参加者の中ではソフトランディング期待が高まっている。このまま失業率が大幅に上昇せずにインフレが減速していくためには、サンフランシスコ連銀の分析に基づけば、求人件数の大幅な減少が必要といえる。
◆ソフトランディングに必要な求人件数の減少幅は、2025年10-12月期までに390万件程度と試算され、毎月13万件程度減少し続ければ達成可能である。求人件数がピークとなった2022年3月から直近までの減少幅が約220万件、1カ月当たり16万件弱で減少してきたことを踏まえれば、十分に達成可能なペースといえる。
◆しかし、労働供給の拡大余地が少ない中で、企業が採用を抑制するほどに収益が悪化、つまりは景気の減速が必要とも考えられる。求人件数を減少させるために一層の景気減速が必要となれば、結局のところ失業率の押し上げにつながり得ることは、ソフトランディングを実現する上での不安要素である。
◆景気減速を実現するために、7月のFOMCでは0.25%ptの追加利上げが予想される。もっとも、ウォラー理事が指摘したように、金融引き締めの効果のタイムラグが短期化しているのであれば、更なる景気減速を実現するために、利上げはFOMC参加者によって現在想定されている年内合計0.50%ptにとどまらない可能性もあるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+2.2万人
2025年8月米雇用統計:雇用環境の悪化が継続し、利下げが近づく
2025年09月08日
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日