サマリー
◆2023年5月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+33.9万人と前月から加速し、市場予想を大きく上回った。しかし、失業率は上昇に転じ、内容を見ても非自発的失業が増加した。事業所調査(堅調な雇用者数)と、家計調査(増加した失業者数)で方向感が異なる結果になったといえる。強弱が入り交じっている現状は、雇用環境の悪化ペースが緩やかであることを示唆している。
◆その他の雇用関連指標に関しても、足下まで大幅な悪化は見られない。雇用環境から見ると、米国経済が急激に悪化していないことは安心感を与えるものの、労働需給のタイトさは大きく変わっていない。賃金上昇率に関しては前年比で減速したが、2023年1月以降、4.4%前後での推移が続いており、インフレ圧力は和らいでいないといえる。
◆金融政策の運営に関して、5月2日・3日に開催されたFOMCでは、0.25%ptの利上げが実施されるとともに、利上げの一旦打ち止めが示唆された。その後のFOMC参加者の発言は、インフレ圧力が続く中で追加利上げの可能性があることを示唆するものもあれば、様子見や利上げ完了を示唆するものもあり、市場参加者の見解は分かれている。今回の雇用統計で、賃金上昇率がなかなか下がらないことに関してはFOMC参加者も警戒感を示すだろうが、指標によって方向感が異なる結果であったことから、6月13日・14日のFOMCでは様子見バイアスが強まると考えられる。
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