サマリー
◆2023年4月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+25.3万人と前月から加速し、市場予想を大きく上回った。失業率は2カ月連続で低下し、内容を見ても非自発的失業者、非自発的パートタイム就業者ともに減少しており、ポジティブな結果といえる。銀行不安を契機とした信用収縮の恐れがある中で、今回の雇用統計の結果は雇用環境がなお底堅く推移していることを示している。
◆雇用環境から見ると、米国経済が急激に悪化していないことは安心感を与えるものの、労働需給のタイトさは継続している。今回の雇用統計でも非労働力人口は増加し、労働参加率や就業率は前月から横ばいとなった。賃金上昇率に関しても4月は再加速しており、インフレ圧力は継続している。
◆金融政策の運営に関して、5月2日・3日に開催されたFOMCでは、0.25%ptの利上げが実施されるとともに、利上げの一旦打ち止めが示唆された。利上げフェーズが一応の節目を迎えたことで、市場の関心は2023年内の利下げの可能性へと移っている。市場は銀行不安がくすぶる中で、景気後退リスクを懸念しているといえる。しかし、今回の賃金上昇率の再加速は、インフレ圧力の緩和が容易ではなく、利下げへのハードルが高いことを示唆している。市場が懸念する景気後退リスクも、FOMCが懸念するインフレ高止まりリスクも根深く、金融政策運営の見直しが困難となっているといえよう。
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