サマリー
◆2022年7月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+52.8万人となり、市場予想を大きく上回った。また、失業率は同▲0.1%ptの3.5%と、コロナ禍前に記録した過去最低水準まで低下した。雇用者数、失業率ともに改善したことを踏まえれば、雇用環境は堅調さを維持したといえる。
◆他方、最大の懸念材料であるインフレ加速に関しては、賃金上昇率が高止まりする結果となった。非労働力人口が増加するなど労働供給が伸び悩んでおり、賃金上昇圧力、ひいてはインフレ圧力が和らぎにくいことを示唆している。
◆雇用環境の先行きについては、労働需要・供給ともに緩やかにペースダウンしていくとの見方を維持する。ただし、労働需要はコロナ禍前にも見られなかったほどの強さとなっており、堅調な雇用環境をサポートする一方で、労働供給が伸び悩んでいることも相まって、労働需給のタイトさを長期化させる可能性があるだろう。
◆金融政策運営に関して、今回の雇用統計の堅調な結果は、9月のFOMCでの0.75%ptの利上げ継続をサポートすると考えられる。9月のFOMCでの利上げ幅がデータ次第となっている中で、次は8月分の雇用統計と7、8月分のCPIの結果が注目される。こうした経済指標に対する評価や先行きの利上げペースを示唆する中間報告として、8月末に開催されるジャクソンホールでの金融政策に関するシンポジウムでのFOMC参加者の発言も併せて確認する必要があるだろう。
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