サマリー
◆2022年6月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+37.2万人となり、市場予想を大きく上回った。失業率は4ヵ月連続で3.6%となり、市場予想通りとなった。この他に関しては、非労働力人口やレイオフによる失業者の増加といった幾分気がかりな部分もある一方、非自発的パートタイム就業者の減少や広義の失業率(U-6)の低下など、景気後退懸念が強まる中でも雇用環境は総じてみれば堅調といえる。また、懸念されるインフレに関連して、賃金上昇率がピークアウトの兆しを強めている点は、インフレ圧力の緩和という意味でポジティブといえる。
◆雇用環境の先行きについては、労働需要・供給ともに緩やかにペースダウンしていくと見込む。新規失業保険申請件数は低水準ながらも増加傾向にあり、企業も雇用の拡大に対して徐々に慎重になりつつあるといえる。他方で、雇用環境が急激に悪化することも考えにくい。求人件数は失業者数を大きく上回る高水準となっており、依然として労働需給のタイトさは続いている。こうした中で、足下で国外からの労働者の流入が増えていることは安心材料であり、労働需給のタイトさを緩和することが期待される。
◆金融政策運営に関して、今回の雇用統計の堅調な結果は、7月のFOMCでの0.75%ptの利上げ継続をサポートすると考えられる。他方で、9月のFOMC以降の利上げペースの変更が、7月のFOMCを含めた今後の金融政策運営の注目点となる。賃金上昇率のピークアウトやエネルギー価格の下落などインフレ圧力が緩和され始める動きも見える中で、利上げペースの緩和が議論の中心に移ることも考えられよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日