サマリー
◆2022年1月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+46.7万人となった。新型コロナウイルスの感染状況の悪化によって1月の雇用統計は弱含むことが想定されていたが、市場予想(Bloomberg調査:同+12.5万人)を大きく上回るポジティブな結果であった。失業率は同+0.1%ptの4.0%となり、市場予想(Bloomberg調査:3.9%)を上回った(悪化)ものの、レイオフによるもので解雇には至っていないことから、過度に悲観的に捉えるべきではないだろう。
◆他方、労働参加率や就業率は伸び悩み、労働需給は一層タイト化しており、賃金上昇率は大幅に加速した。足下で新規感染者数がピークアウトしたことで労働供給の拡大への期待も高まるが、依然として新規感染者数は高水準にある。労働需給のタイトさの緩和に向けて、企業の採用意欲が強い中で、労働供給がボトルネックとなる構図は続くと考えられる。
◆金融政策運営への示唆として、今回の雇用統計の結果が大きく悪化すれば、1月のFOMCで示された正常化への道筋はハト派的な軌道修正を迫られる可能性があった。しかし、ふたを開ければ、雇用者数は堅調な結果となり、賃金上昇率が加速したことから、インフレ圧力が強まるとの想定の下で、FOMC参加者は一層タカ派的なスタンスを強める可能性がある。市場も急ピッチで利上げが進んでいくとの見方を強めており、FOMC参加者にとってもタカ派化へのハードルは低くなり得るだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米銀最大手、9.7兆ドルの国債保有増加余地
レバレッジ比率緩和、米国国債市場の機能改善をもたらすか
2025年12月16日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
米国経済見通し 関税政策はマイルド化へ
トランプ大統領に対する世論と共和党内の不満の高まりが抑止力に
2025年11月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

