サマリー
◆2021年12月の雇用統計では、失業率が前月差▲0.3%ptの3.9%と、2020年2月以来となる3%台まで低下するポジティブな結果となった。他方、新型コロナウイルスの感染状況が悪化する中で、非農業部門雇用者数は同+19.9万人と前月からさらに減速し、2021年内で最も低水準の伸びとなった。また、労働参加率や就業率については回復ペースが緩慢なままである。労働供給がなかなか拡大しない中で、賃金上昇率は前月比ベースで加速した。
◆雇用環境の先行きに関しては、短期的には、オミクロン株の感染拡大による悪影響が懸念材料といえる。労働需要に関しては、オミクロン株による感染の拡大ペースは過去の変異株に比べて急激である一方、収束へと転換するまでの期間も短い可能性がある中で、レイオフの増加は避けられる可能性がある。一方、労働供給に関しては、感染回避のための就職の一時先送りや、子育て世代の職場復帰が遅れることで伸び悩むことも想定される。
◆最後に金融政策運営への示唆として、今回の雇用統計の結果は正常化へと進むFOMCの歩みを止めるものにはならないだろう。雇用者数は冴えない結果だったが、失業率の低下や賃金上昇率の高さを踏まえ、最大雇用に近づいているとの判断、つまりは今回の雇用統計の良いところ取りによって正常化の推進が可能となろう。
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