サマリー
◆2021年9月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+19.4万人と前月からさらに減速し、市場予想を下回った。季節調整の歪みで減少した政府部門を除いた民間部門も市場予想を下回ったことから芳しい結果とはいえない。9月時点の米国における新型コロナウイルスの感染状況は厳しく、雇用者が伸びにくい環境にあったと考えられる。
◆失業率は前月差▲0.4%ptの4.8%と、市場予想を下回った(改善)。ただし、非労働力人口が増加する中で失業率が低下したことから、手放しで喜ぶことができる結果ではない。家計調査(失業率)と事業所調査(雇用者数)の結果のかい離に関しては、事業者調査の調査票回収率が相対的に低水準にあることから、今後雇用者数が上方修正される可能性はある。
◆雇用者数が上方修正されるとしても減速感があることに変わりない。10月に入っても感染状況は依然厳しいため、10月の雇用者数も大幅な加速は見込みにくい。他方、賃金上昇率が加速したように、企業の労働需要は強いままである。感染状況が改善し労働供給が増えれば、11月以降は雇用者数の伸びが加速する可能性はあるだろう。
◆当面の金融政策運営に対して、今回の雇用統計が与える影響は軽微と考えられる。テーパリングは予想通り11月のFOMCで公表されることがベースシナリオである。雇用者数は減速したものの、失業率は低下しており、テーパリングの条件である「更なる実質的な進展」を満たしたと捉えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
-
非農業部門雇用者数は前月差+17.7万人
2025年4月米雇用統計:景気への不安が高まる中で底堅い結果
2025年05月07日
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日