サマリー
◆2021年7月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+94.3万人、失業率は同▲0.5%pt低下の5.4%となった。非農業部門雇用者数、失業率ともに市場予想を上回ったことから、雇用環境の回復の力強さを示す良好な結果であったといえる。
◆長期失業者が減少したことで、スキルの陳腐化による雇用のミスマッチに対する懸念は和らいだ。他方、賃金上昇率を見ても高い伸びを維持しており、労働需給のタイトさは継続している。労働参加率の回復ペースは緩やかなままであり、更なる労働供給の拡大余地は残る。今回の良好な雇用統計の結果は、失業保険の給付増額を期限前に終了した州で労働供給が増加し、雇用環境の改善が進んだことが要因として考えられる。その場合、期限まで失業保険の給付増額を継続する方針である州を含めて、今後も労働供給の拡大が期待できるだろう。
◆他方、リスクは新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大である。ワクチン接種が進んでいることで重症者数や死者数が相対的に抑制されている点は以前と異なるが、政府によって感染抑制のための規制が強化されれば、雇用環境の回復にも影響を及ぼすことになる。
◆今回の雇用統計の結果を受けて、FOMC参加者はタカ派姿勢を強める可能性がある。住宅市場の過熱やインフレ加速の長期化に備えた利上げ余地を確保するために、タカ派を中心に9月のFOMCでのテーパリング開始の公表を主張し始めている。8月も同様に失業者数が大きく減少すれば、タカ派の見解がFOMC参加者内でより共感を得られていく可能性があるだろう。
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