サマリー
◆4月後半以降、米国では多くの州・地域で自宅待機要請・指示が緩和され、経済活動の再開(リオープン)が進んでいる。ただし、新型コロナウイルス新規感染者数は依然多く、すぐに感染収束が見込める状況にはない。感染が収束しない中でもリオープンに踏み切ったのは、経済活動の停止に伴う悪影響が無視できないほど深刻であることが考えられる。
◆感染が再拡大してしまえば元も子もないことから、リオープンは慎重さを要する。拙速なリオープンを避ける結果、より緩やかな景気回復を想定せざるを得ない。こうした中、企業・家計を支えるための追加支援が検討されている。5月15日には、民主党が主導し、下院では追加支援策(HEROES Act)が可決された。内容は地方政府の支援に加え、家計への現金再給付や企業向けのPPPローンの再拡充など、補償を手厚くするものである。今後は上院での議論・採決に移ることになる。
◆しかし、HEROES Actが成立する見込みは立っていない。民主党は手厚い補償を志向するも、上院多数派の共和党は更なるリオープンやペイロールタックスの減税に積極的といえる。加えて、大統領・議会選挙を半年後に控え、超党派での協力がしにくくなる選挙モードが加速していくことも想定される。感染拡大の収束やリオープンの推進に関する不確実性に加えて、更なる追加支援を巡っては見通しが付きにくいことも、米国経済の先行きを左右するリスク要因の一つとして留意すべきだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
-
非農業部門雇用者数は前月差+17.7万人
2025年4月米雇用統計:景気への不安が高まる中で底堅い結果
2025年05月07日
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日