サマリー
◆米国ではこのところ長期金利が上昇基調を強めている。10年債利回りは5月16日には、一時3.1%に到達し、2011年7月以来の高水準を記録した。長期金利上昇の背景にある最大の要因は、原油価格の上昇などによってインフレ率が加速する可能性が高まり、FRB(連邦準備制度理事会)による利上げの織り込みが従来よりも進んだことである。
◆加えて、長短金利差の縮小傾向が止まっており、長期的な経済成長に対する見方が強気に修正されたことも長期金利上昇の一因になっていると解釈できる。だが一方で、足下の長期金利の上昇は景気の引き締めに作用するとみられ、将来的な景気減速につながるリスクは高まっている。
◆企業部門については、潤沢なキャッシュフローを背景に、そもそも借入による資金調達ニーズが大きくないことから、金利上昇によるマイナスの影響はさほど大きくならないと考えられる。他方、家計部門に関しては、金利の上昇が借入を前提とした耐久財消費や住宅購入の重荷になろう。雇用・所得環境の改善が続く見込みであることに鑑みれば、耐久財消費や住宅投資の増加基調は続くと見込まれるものの、金利上昇によってその増加ペースが抑えられる公算が大きい。
◆利上げサイクルを続ける以上、金利上昇が景気を減速させるのが自然であり、長短金利差の縮小が続くというのがあくまで基本シナリオとなろう。長期金利が上昇ペースを速めた4月以前は、長短金利の縮小に対する警戒感が高まっていた。長期金利については上振れだけではなく、下振れリスクについても引き続き注視していく必要がある。
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