サマリー
◆2018年3月の非農業部門雇用者数は前月差+10.3万人と6ヵ月ぶりの小幅な伸びに留まり、市場予想(Bloomberg調査:同+18.8万人)を下回った。ただし、雇用者数の伸びの減速は、同+32.6万人と大幅に増加した前月からの反動と考えられる。3ヵ月移動平均値は同+20.2万人と、均して見た雇用者数の増加ペースは底堅く、3月の下振れを過度に悲観視する必要はない。
◆家計調査による3月の失業率は4.1%となり、低下を見込んでいた市場予想(4.0%)に反して前月から横ばいとなった。長期的に続いてきた低下トレンドは、このところ足踏みしているが、これは失業率が長期均衡である自然失業率を下回る水準まで低下し、完全雇用をほぼ達成していることを反映した可能性がある。失業率は低水準にあり、労働需給は非常にタイトな状況が続いている。
◆3月の民間部門の平均時給は、前月から8セント上昇、前月比+0.3%となり、市場予想通りの結果となった。前年比変化率は+2.7%と前月の+2.6%からわずかに加速し、こちらも市場予想と一致した。労働需給のタイトな状況が続く中、賃金上昇率は緩やかに加速しつつある。
◆労働市場の先行きに関して、緩やかな雇用者数の増加基調が続くと見込む。ただし、通商政策を巡る不透明感は先行きのリスクとして注意が必要である。中国向けの関税についてはまだ交渉過程にあり、実体経済に影響が出るタイミングや、影響の大きさを現時点で判断するのは難しいが、関税の導入は少なくとも米国経済、労働市場にとってネガティブと考えられる。先行きを巡る不透明感は、短期的にも企業マインドの悪化や、採用意欲の低下に繋がる可能性があろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+2.2万人
2025年8月米雇用統計:雇用環境の悪化が継続し、利下げが近づく
2025年09月08日
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日