失業率の低下に反して、賃金が失速

2017年10月米雇用統計:ハリケーンからの復旧で雇用は堅調

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2017年11月06日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2017年10月の非農業部門雇用者数は前月差+26.1万人となり、2016年7月以来の高い伸びとなった。最大の要因は、ハリケーンの影響で9月に減速したサービス業の雇用者数が、復旧に伴って大幅な増加に転じたことである。


◆家計調査による10月の失業率は前月から▲0.1%pt低下の4.1%となり(市場予想:4.2%)、今景気回復局面における最低値を更新した。これは2000年12月以来の低水準である。ただし、失業率の内訳を見ると、今回、失業率が低下した最大の要因は、非労働力人口が大幅に増加したことであり、内容はさほど良くない。


◆10月の民間部門の平均時給は前月から1セント低下、前月比▲0.0%となり、市場予想(同+0.2%)を下回る結果となった。時給の低下は2014年12月以来、約3年ぶりである。9月の加速を受けて、賃金上昇率の加速に対する期待感が高まっていたが、そうした期待を裏切るネガティブな結果であった。


◆インフレ率の鈍化がこのところの最大の注目点となっているFRB(連邦準備制度理事会)にとって、今回の雇用統計で賃金上昇率が鈍化したことは、今後の利上げペースを緩やかにさせる要因になると考えられる。ただし、金融市場は雇用統計の公表後も12月のFOMC(連邦公開市場委員会)での利上げを高い確率で織り込んでおり、利上げが見送られる可能性は低い。

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