失業率が一層低下も、賃金は停滞

2017年5月米雇用統計:6月FOMC後の利上げペースは見通しづらく

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2017年06月05日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2017年5月の非農業部門雇用者数は前月差+13.8万人と前月から減速し、市場予想(Bloomberg調査:同+18.2万人)を下回った。4月分、3月分の下方修正も併せると、単月の下振れ以上に弱い内容であり、期待外れの結果となった。ただし、雇用者数の増加ペースの鈍化は、労働需要の減少によるものではなく、完全雇用が達成されつつある中での労働供給要因によるものと考えられ、悲観的に捉える必要はない。


◆雇用者数の伸びが減速する一方で、5月の失業率は前月から▲0.1%pt低下の4.3%となり、2001年5月以来の低水準を記録した。だが、今回の失業率の改善については必ずしも良い内容ではない。非労働力人口は前月差+60.8万人と大幅に増加し、労働参加率が同▲0.2%ptと2ヵ月連続で低下したことが失業率を押し下げた。


◆5月の民間部門の平均時給は前月比+0.2%となり、市場予想通りの結果となった。しかし、4月分がわずかに下方修正された影響もあり、民間部門時給の前年比変化率は+2.5%と市場予想(同+2.6%)を下回った。労働需給のひっ迫感が強まる中でも、賃金上昇率が再加速する兆しは見られていない。


◆今回の雇用統計は全体として弱めの結果であったが、雇用統計の公表後も金融市場は6月13日~14日のFOMCでの利上げを強く織り込んでおり、6月のFOMCでは追加利上げが決定されることになろう。一方、賃金上昇率が停滞し、インフレ加速の兆しが見られなかったため、その後の利上げペースは見通しづらくなったと言える。6月のFOMCの次の利上げのためには、賃金上昇率、インフレ率の再加速が確認される必要があろう。

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