サマリー
◆2017年5月の非農業部門雇用者数は前月差+13.8万人と前月から減速し、市場予想(Bloomberg調査:同+18.2万人)を下回った。4月分、3月分の下方修正も併せると、単月の下振れ以上に弱い内容であり、期待外れの結果となった。ただし、雇用者数の増加ペースの鈍化は、労働需要の減少によるものではなく、完全雇用が達成されつつある中での労働供給要因によるものと考えられ、悲観的に捉える必要はない。
◆雇用者数の伸びが減速する一方で、5月の失業率は前月から▲0.1%pt低下の4.3%となり、2001年5月以来の低水準を記録した。だが、今回の失業率の改善については必ずしも良い内容ではない。非労働力人口は前月差+60.8万人と大幅に増加し、労働参加率が同▲0.2%ptと2ヵ月連続で低下したことが失業率を押し下げた。
◆5月の民間部門の平均時給は前月比+0.2%となり、市場予想通りの結果となった。しかし、4月分がわずかに下方修正された影響もあり、民間部門時給の前年比変化率は+2.5%と市場予想(同+2.6%)を下回った。労働需給のひっ迫感が強まる中でも、賃金上昇率が再加速する兆しは見られていない。
◆今回の雇用統計は全体として弱めの結果であったが、雇用統計の公表後も金融市場は6月13日~14日のFOMCでの利上げを強く織り込んでおり、6月のFOMCでは追加利上げが決定されることになろう。一方、賃金上昇率が停滞し、インフレ加速の兆しが見られなかったため、その後の利上げペースは見通しづらくなったと言える。6月のFOMCの次の利上げのためには、賃金上昇率、インフレ率の再加速が確認される必要があろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日