米国経済見通し 高まる減税への期待

政策の具体像は近く明らかになる見込みだが、実現性は不透明

RSS

2017年02月22日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆トランプ大統領は2月9日に「向こう2、3週間に税、および航空インフラ開発に関して、目を見張るような発表を行う」と発言し、減税に対する期待感が大きく高まっている。トランプ大統領は上下両院合同会議での演説を2月28日に予定しており、経済政策の具体的な姿が漸く明らかになると見込まれる。


◆トランプ大統領が税制改革に対する考え方を明らかにした後も、それがすぐに実行されるとは限らない。共和党のポール・ライアン下院議長は、議会における政策の優先順位はあくまでオバマケアの廃止・置き換えにあることを表明している。加えて、3月16日には延長されていた債務上限の適用が再開されることもあり、税制改革に関する議論がどれだけ進められるかは、不透明感が非常に強い。


◆FRBにとっても財政政策の行方が金融政策運営を考える上での大きな不確定要因になっている。次回の3月14日~15日のFOMCまでに、トランプ大統領による財政政策の内容が幾分明らかになるとみられるが、FOMC参加者は金融市場の反応も含めて、財政政策の影響を見極めていく必要がある。市況要因を除いた基調的なインフレ率や賃金に過熱感が見られていないため、市場が十分に利上げを織り込んでいない状況で、利上げを急ぐ可能性は低いだろう。


◆足下の米国経済の現状を確認すると、緩やかながら着実な成長が続いている。雇用者数の増加を背景に、個人消費は堅調さを維持していることに加えて、設備投資の持ち直しの動きが継続するなど総じて底堅い。政策に対する期待感が経済にとってプラスの効果を表し始めている部分もあるとみられ、政策動向は短期的な経済動向にも影響を及ぼす可能性があろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。