サマリー
◆2017年1月の非農業部門雇用者数は前月差+22.7万人となり、前月から増加幅が拡大、4ヵ月ぶりに同+20万人を上回る高い伸びとなった。非農業部門雇用者数増減の3ヵ月移動平均も同+18.3万人と前月から加速しており、雇用者数の着実な増加基調が続いていることを確認させる結果であった。
◆1月の失業率は4.8%となり、横ばいを見込んでいた市場予想に反して、前月から+0.1%pt上昇した。失業率の内訳を確認すると、労働参加率の上昇が失業率を押し上げる要因になった。就業率は同+0.2%pt上昇しており、労働市場全体として見れば内容は悪くない。
◆1月の民間部門の平均時給は前月から3セント上昇、前月比+0.1%となり、市場予想(同+0.3%)を下回った。前年比変化率を見ても+2.5%と、2016年3月以来の低い伸びに留まっている。前月の大幅な賃金上昇を受けて、賃金上昇率の加速に対する期待感が高まっていたため、期待外れの結果であったと言える。
◆労働市場の先行きについては、引き続き緩やかな改善基調が続くと見込む。企業による底堅い労働需要を背景に、雇用者数は先行きも増加基調が続くとみられる。ただし、完全雇用が近づいていることで、労働供給が制約となって雇用者数の伸びは今後鈍化していく公算が大きい。一方で、今回の雇用統計では期待外れの結果となった賃金上昇率については、タイトな労働需給を背景に更なる加速が見込まれる。
◆景気動向とは別の問題として、トランプ大統領による移民政策の厳格化が労働市場の改善を阻害する可能性にも留意する必要があろう。移民政策が一層厳格化されれば、労働力不足がさらに深刻化する可能性がある。また、米国への移民には高度人材も多く含まれており、そうした人材の流入が止まることは米国の中長期的な成長力を阻害する要因にもなり得るため、今後の政策動向を十分に注視していく必要がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 駆け込みの反動一巡後の注目点は?
追加関税措置次第となる中、トランプ大統領を“TACO”と嘲るべからず
2025年06月24日
-
FOMC 様子見姿勢を継続
経済指標の基調の捉えにくさと正確性への懸念は利下げ遅延リスクを高める
2025年06月19日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日