サマリー
◆米国経済の先行きを占う上での最大の注目点である、トランプ次期大統領による政策の具体像については依然明らかにはなっていない。1月20日にトランプ氏は正式に大統領に就任し、その後の一般教書や予算教書などを経て、トランプ氏が考える具体的な政策が徐々に明らかになると考えられる。だが、それらによって政策の不確実性がすぐさま払拭されるわけではないだろう。
◆トランプ氏によって提案された政策が、どのようなタイミングで、どの程度実現するかは議会動向に委ねられる部分が大きい。現時点では共和党における政策の優先順位はオバマケア(医療保険制度改革法)廃止・置き換えにあるとみられ、経済効果が期待される税制改革などに着手するまでに時間を要する可能性がある。
◆トランプ氏はメキシコに生産工場を持つ自動車メーカーを名指しで批判し、こうした発言に対応する形で、米国内外の自動車メーカーなどはメキシコでの投資の撤回や、米国内での投資を発表した。現時点では、こうした動きはあくまで個別企業の対応に留まっているが、経済にとっては短期的な上振れリスクが大きくなっていると言える。
◆2017年の実質GDP成長率予想については、従来の前年比+2.2%から前年比+2.3%へとわずかに上方修正した。個人消費、住宅投資の家計部門は2年連続で伸びが縮小すると見込む一方、設備投資がプラス成長に転換することと、輸出の加速が成長率を押し上げるという見方に変更はない。
◆今回新たに予想した2018年に関しては、前年比+2.6%へと成長率が加速すると見込む。成長率が加速する最大の要因は、トランプ氏による財政政策によって内需が成長率を高めることである。リスク要因としては、減税等の財政措置が実現しないことであるが、そうなった場合でも米国が景気後退に陥るリスクは低いと考えられ、+2%台前半の成長を維持することは可能であろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日