サマリー
◆2016年12月の非農業部門雇用者数は前月差+15.6万人となり、市場予想(Bloomberg調査:同+17.5万人)を下回った。しかし、過去分に関して10月分、11月分の2ヵ月合計では+1.9万人上方修正されたことを考慮すれば、おおよそ市場予想に沿った結果と言える。雇用者数は緩やかな増加基調が続いている。
◆12月の失業率は4.7%と前月から+0.1%pt上昇し、市場予想通りの結果となった。就業者数の増加が失業率の押し下げに寄与する一方で、人口増加、および労働参加率の上昇が失業率を押し上げた。労働参加率の上昇を併せて考えれば、ヘッドラインほどに悪い内容ではないと言えよう。また、失業率は自然失業率と考えられる水準近傍で推移しており、労働需給が引き続きタイトな状況にあることに変わりはない。
◆12月の民間部門の平均時給は前月から10セント上昇、前月比+0.4%と市場予想(同+0.3%)を上回る改善となった。前年比変化率は+2.9%と前月(同+2.5%)から加速、2009年6月以来の高い伸びを記録しており、賃金上昇率が着実に高まっていることを確認させる結果であった。
◆このところ頭打ちながらも、企業による求人件数は高水準を維持しており、企業の労働需要は旺盛な状況が続いている。加えて、次期政権の政策に対する期待の高まりなどから企業マインドは明るさを増しつつあることも、労働市場の先行きを考える上での好材料と言える。ただし、完全雇用が近づく中で、労働供給が制約となって雇用者数の伸びは今後鈍化していく公算が大きい。
◆今回の雇用統計で加速が見られた賃金については、タイトな労働需給を背景に更なる加速が見込まれる。しかし、労働参加率が上昇し、生産性の低い労働力が労働市場に参入することになれば、平均賃金を抑制する要因となる。賃金上昇率はあくまで緩やかに加速していくと見込まれよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日