前月の失速から一転、雇用者数が急増

2016年6月米雇用統計:想定外の上振れで景気減速懸念は緩和

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2016年07月11日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2016年6月の非農業部門雇用者数は前月差+28.7万人と、失望的な結果となった前月から一転して急加速し、市場予想を大きく上回った。前月に雇用者数を押し下げた米国大手通信業者ベライゾンのストライキが終了したことによって+3.5万人程度雇用者数が押し上げられたが、この影響を除いても雇用者数は同+20万人を大きく上回る増加となり、非常にポジティブな結果であった。


◆一方、6月の失業率は前月から+0.2%pt上昇の4.9%と、市場予想よりも悪い結果となった。失業率が前月から悪化した主な要因は、非労働力人口が3ヵ月ぶりの減少に転じたことである。労働参加率は前月から+0.1%pt上昇したが、職探しを諦める人が減り、労働市場に参入する人が増える一方で、そうした人たちが必ずしも仕事を得ることができなかったことを示しており、良い内容とは言い難い。


◆労働市場は先行きについても緩やかな改善が続くと見込んでいる。個人消費がサービス業を中心に雇用を誘発し、雇用の増加が更なる個人消費を生み出すという好循環は今後も継続するとみられる。ただし、完全雇用に近づく中、雇用者数の増加ペースは鈍化する公算が大きく、今回のような月20万人超の雇用者数の増加が先行きについても維持されるのは困難と考えられる。


◆今回の雇用統計では、マーケットの注目度が最も高い非農業部門雇用者数が急増する結果となったが、FRBが7月26-27日に開催するFOMCで追加利上げを行う可能性は低いと考える。米国経済にとってもリスク要因であったBrexitが現実のものとなり、その影響を見極めるためにはもう少し時間が必要であると考えられる。また、6月のFOMC後の記者会見において、イエレン議長は単月の経済指標の動きを過度に重視すべきでないと述べており、今回大きく上振れした雇用の伸びを以て利上げに踏み切るとは考え難い。

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