消費の減速が雇用者数を下押し

2016年4月米雇用統計:失業率は横ばいだが、景気減速懸念高まる

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2016年05月09日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2016年4月の非農業部門雇用者数は前月差+16.0万人となり、市場予想(Bloomberg調査:同+20.0万人)を大きく下回った。非農業部門雇用者数前月差の3ヵ月移動平均値は+20.0万人と、好不調の節目と言われる20万人を維持しており、雇用者数は底堅い増加が続いていると言えるが、モメンタムはこのところ悪化している。


◆4月の失業率は前月から横ばいの5.0%となり、改善を見込んでいた市場予想(Bloomberg調査:4.9%)よりも悪い結果となった。また、職探しを諦めて非労働力化が進んだことによる労働力人口の減少が失業率を押し下げており、内容も良くない。


◆民間部門の平均時給は前月から8セント上昇、前月比+0.3%と、概ね市場予想(Bloomberg調査:同+0.3%)通りの結果となった。前年比変化率は+2.5%と前月から上昇幅が拡大しており、弱い結果となった雇用者数、失業率とは対照的に賃金については堅調な結果であった。


◆4月の雇用統計では、とりわけ小売における雇用環境の悪化が顕著であり、このところの個人消費の減速が労働市場にも影響している可能性が示唆される。雇用者数全体としては依然増加基調が続いており、賃金についても着実に増加しつつあることから、個人消費が腰折れする可能性は低い。しかし、個人消費の伸びが緩やかなものに留まることで、雇用の伸びが今後一層鈍化する可能性には注意が必要であろう。

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