期待以上の雇用増も、賃金上昇は一服

2015年12月米雇用統計:雇用増加ペースは前月差+29.2万人に加速

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2016年01月12日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2015年12月の非農業部門雇用者数は前月差+29.2万人の増加となり、市場予想を大幅に上回る改善となった。非農業部門雇用者数増減の3ヵ月移動平均値は+28.4万人と2015年1月以来の高さとなり、労働市場は力強い改善が続いている。


◆12月の失業率は5.0%と前月から横ばいとなった。就業者数が前月差+48.5万人と大幅に増加したが、失業者数が同▲2.0万人の減少に留まる一方で、非労働力人口が同▲27.7万人と大幅に減少しており、非労働力人口の就業が進んだ。就業率、労働参加率は前月から上昇しており、ヘッドライン以上に良い内容と評価できる。


◆民間部門の平均時給は前月から横ばいとなり、市場予想を下回った。前年比で見た時給変化率は+2.5%と、前月の+2.3%から上昇幅が拡大しているが、これは賃金上昇が鈍化した前年の裏の影響であり、賃金については期待外れの結果となった。


◆足下で製造業を中心とした企業の景況感が悪化している点は懸念材料であるが、労働市場の中心はサービス部門であり、個人消費などの内需の拡大を背景に底堅い改善が続くだろう。ただし、2016年に入ってからの世界的な株価の下落が、マインドの悪化などを通じて実体経済を下押しする可能性には注意が必要である。株価下落が原因となって労働市場の改善や景気が腰折れする可能性は低いと考えられるが、短期的に雇用の伸びが鈍化する可能性があろう。

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