労働市場は改善基調だが、一部に弱さも

2015年6月の米雇用統計:非労働力人口の増加が失業率を押し下げ

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2015年07月03日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦
  • 土屋 貴裕

サマリー

◆6月の非農業部門雇用者数は前月から+22.3万人の増加となった。過去分については、4月、5月の合計で▲6.0万人の下方修正になったことも踏まえると、ヘッドラインとしてはやや物足りない結果であったが、雇用者数が緩やかな増加基調にあることを確認させる底堅い結果であった。


◆雇用者数の増減を部門別に見ると、政府部門は前月から横ばいとなり、民間部門の増加が全体を押し上げた。民間部門では+22.3万人の雇用が増加したが、増加の大半はサービス業によるものであり、生産部門については相対的に冴えない状況が続いている。


◆5月の失業率は5.3%で前月から0.2%pt低下し、事前の市場予想(Bloomberg調査:5.4%)を上回る改善となった。ただし、失業者数は前月から減少したものの、就業者数も前月から減少しており、失業率の低下には非労働力人口の増加が大きく寄与した。


◆賃金上昇率が前月から低下する一方、経済的理由によるパートタイム労働者が減少するなど、雇用の質という点については強弱入り混じった結果であった。FRB(連邦準備制度理事会)が早期に利上げを開始する可能性は後退したと言えよう。年内の利上げを排除するほどに悪い結果でもないが、利上げに踏み切るためには、労働参加率の低下や賃金上昇率の鈍化が一時的なものかどうかを十分に見極める必要があるとみられる。

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