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第205回日本経済予測

コロナ・ショックで世界経済はどこへ向かうのか?~①先進国の過剰債務問題、②新興国の債務リスク、③サプライチェーン寸断の影響、を検証~

2020年05月22日

調査本部 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

経済調査部 シニアエコノミスト 佐藤 光

経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

経済調査部 シニアエコノミスト 橋本 政彦

経済調査部 エコノミスト 山口 茜

経済調査部 エコノミスト 鈴木 雄大郎

経済調査部 エコノミスト 小林 若葉

経済調査部 研究員 田村 統久

経済調査部 研究員 和田 恵

経済調査部 エコノミスト 岸川 和馬

経済調査部 研究員 矢澤 朋子

サマリー

  1. 実質GDP成長率見通し:20年度▲5.5%、21年度+3.0%:1-3月期の実質GDP成長率は2四半期連続のマイナス成長となった。新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く表れる4-6月期は前期比年率▲20%超と見込まれる。本予測のメインシナリオでは、6月前後に感染が収束に向かうとの前提の下、20年度の実質GDP成長率は▲5.5%と見込まれる。しかしながら、収束時期が21年以降に後ずれする可能性は小さくない。この場合、同年度の実質GDP成長率は▲10.1%へと大幅に悪化し、金融危機が発生するリスクも高まる。失業率は最悪のケースで5%pt程度上昇する可能性があり、事業継続や雇用維持のための追加の経済対策が急務だ。
  2. 論点①:コロナ禍による過剰債務リスク:世界経済の急減速を受けて、信用リスク拡散への懸念が高まっている。既に、世界的には民間非金融部門と政府部門の債務が高水準に積み上がっており、当面はその動向が注目される。前者の民間債務については、足元から債務削減への圧力が高まろう。民間債務の削減は、投資の減少等を通じて経済成長率の低下と一定の関係性がみられ、その規模がポイントとなる。後者の政府債務については、経済対策等により短期では一層の拡大が不可避だが、各国間の財政余力の差には注意が必要となる。一方で、長期的には過剰な政府債務が経済成長率を抑制する懸念があることから、財政規律維持への配慮も重要になってこよう。
  3. 論点②:警戒すべき新興国はどこか?:新型コロナウイルスの感染拡大により、新興国の債務不履行リスク(以下、債務リスク)が高まっている。新興18カ国を対象に、「2019年時点の債務リスク」「新型コロナ感染拡大リスク」「原油安」「債務不履行時の対外波及度」の四つの観点から特にリスクが高い国を抽出すると、南アフリカ、サウジアラビア、ロシア、ブラジル、トルコの5カ国が挙げられる。債務リスクが顕在化すれば、こうした国の債権を多く保有する米国、英国などの先進国にも悪影響を及ぼす。とりわけスペインは、新型コロナウイルスによる経済的打撃が大きく、財政状況はコロナ・ショック前から悪かった。新興国の債務リスクの発現がスペインの財政を悪化させ、欧州各国に悪影響が波及する可能性がある。
  4. 論点③:サプライチェーンを通じた生産停滞の波及:新型コロナウイルスの影響は需要ショックであると同時にサプライショックである。国際産業連関表を用いた波及効果の分析によれば、生産1単位あたりの波及効果は台湾、韓国が大きく、米欧中は小さい。ただし、生産規模も考慮すれば世界のサプライチェーン上では需要・供給の両面で中国の存在感が大きい。日米欧中はそれぞれ周辺国とのサプライチェーン網を構築していることに加えて、相互に依存しており、今後は欧米での生産停滞が中国の持ち直しを阻害する可能性が示唆される。日本は、自動車産業などで海外から供給面で影響を受けやすく、供給制約による生産の下押しが続く可能性があろう。
  5. 日銀の政策:予測期間中のCPIは、20年度、21年度ともに前年割れが見込まれる。景気の急速な悪化により、当面は企業への資金繰り支援の必要性が強い。そのため日銀は極めて緩和的な金融政策を継続しつつ、必要に応じて追加の緩和策を実施するとみている。

【主な前提条件】
(1)公共投資は20年度▲0.5%、21年度+3.1%と想定。
(2)為替レートは20年度107.1円/㌦、21年度107.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は20年▲4.8%、21年+3.2%とした。

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