サマリー
◆構造的な人手不足などを背景に、近年売り手市場にあるとみられる日本の新卒採用だが、大企業を中心に長らく定着してきた「新卒一括採用」に変化が見られているほか、AIの普及を受けた新たな懸念も生じている。
◆第一に、採用・就職活動の早期化・長期化だ。採用活動の開始を6月1日以降とする政府の要請と実態の乖離は拡大しており、同日を前に7割程度の学生が内々定を得ている。他方、より遅い時期まで採用・就職活動を続ける企業・学生も増加している。
◆第二に、いわゆる「ジョブ型採用」が広がりつつある。ただし、その多くは本来的なジョブ型雇用への転換というより、初期配属先の職種を明確化するなど、あくまでメンバーシップ型雇用の枠組み内の見直しとして位置付けられる。
◆第三に、AIの普及が新卒採用の縮小をもたらすのではないか、と一部で懸念されている。しかし、日本では構造的な人手不足が続く見込みであるほか、メンバーシップ型の雇用慣行も根強い。このため、新卒採用全体が急速に縮小する可能性は現時点では高くない。
◆以上の変化はいずれも、メンバーシップ型雇用の骨格を保ったまま、その周辺が変形している過程と整理できる。今後も、メンバーシップ型雇用の基本的な枠組みが急速に失われるとは想定しがたい。しかし、AIの普及などを背景に「ジョブ型採用」の拡大が加速する可能性があるほか、新卒人材に期待される姿も一段と変化していくとみられる。日本企業には、外部環境の変化と自社の経営方針を照らし合わせて、新卒採用のあり方を柔軟に調整していくことが課題となる。
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