2022年04月01日
サマリー
◆経済成長と再生可能エネルギー(以下、再エネ)の拡大を両立するためには、再エネによる発電量が拡大する過程で生じるさまざまな課題に適切に対応する必要がある。本稿では電力料金の上昇、設備投資の増強の必要性、移行コスト、除却コストの4つの課題を取り上げる。
◆1つ目の電気料金への影響は限定的とみられる。家計の電気料金の増加は世帯あたり消費支出の0.2%程度と試算され、電力の投入割合が高い業種で付加価値率の押し下げ幅が最も大きい廃棄物処理業でも、その影響は▲0.2%ptにとどまる。2つ目の再エネ拡大のための設備投資は、累計額で約49兆円と日本のGDPの1割弱に相当する規模の投資が2030年度までに必要になるだろう。3点目の移行コストでは、グリーン対策に端を発するインフレの「グリーンフレーション」に注意が必要だ。再エネへの移行期間中に国内でグリーンフレーションが発生した場合、電力使用量の多い企業や家計を中心に悪影響を受けることになる。最後に、第6次エネルギー基本計画の目標が達成された場合、火力発電量は大幅な減少が見込まれる。これに伴い、火力発電施設や化石燃料の貯蔵施設などの一部が不要になることから、除却コストが発生し、発電業者にとって投資資金の回収が困難になる可能性があるとみられる。
◆再エネ拡大の過程で課題は少なくないが、脱炭素化を目指して再エネを拡大していく流れは長期的に続くだろう。加えて、直近の2つのリスク(ウクライナ情勢の緊迫化と福島県沖を震源とする地震に伴う電力需給のひっ迫)によって再エネ拡大の必要性が改めて社会に認識されたとみられる。
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