2022年01月24日
サマリー
◆2022~31年における世界経済成長率は年率+3.1%と予想する。予測期間の初期においては、新型コロナウイルス感染拡大による落ち込みからの回復過程が続くことで高めの成長が見込まれる。しかし、反動局面の一巡に加えて、米国のFRBや欧州のECBが予測期間の前半にも利上げを開始することで、成長率は徐々に鈍化するとみられる。世界経済成長率は予測期間後半にかけて、潜在成長率並みへと収れんしていくだろう。
◆2022~31年度における日本の実質GDP成長率は年率+1.0%と見込んでいる。予測期間の前半は、緩和的な財政・金融政策の下、感染収束に伴う経済活動の正常化を主因に、同+1.2%の成長率を見込む。後半にはCPI上昇率が前年比+1.0%をおおむね上回る状況が続き、日本銀行が利上げを実施することに加え、人口減少の加速により、成長率は同+0.9%へと低下するとみている。2025年度の国・地方の基礎的財政収支はGDP比▲3.0%と見込まれ、財政健全化目標の達成は極めて厳しい。
◆CPIで実質化した2040年度の医療・介護給付費は2020年度に比べ、それぞれ1.3倍、1.5倍に増加する見込みである。家計の医療・介護保険料負担率は同1.4倍に高まる見通しだ。全世代型社会保障の実現には、①「経済成長」と「給付抑制」を同時に取り組むこと、②将来推計を通じて必要な改革の規模を把握し、改革メニューに適宜反映、③応能負担の徹底とともに、財政の再分配機能を強化(プッシュ型給付の実現)、④EBPMにより有効性を高めた少子化対策の推進、⑤安定財源の確保、が求められる。
◆第6次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギー(再エネ)による発電量の割合を2030年度で36~38%まで高めるという目標が定められた。これを達成した場合、日本のGDPは2.5兆円程度拡大すると試算される。再エネによる発電量が拡大する過程で生じる課題としては、電力料金の上昇、設備投資の大幅な増強、資源価格の上昇、除却コスト等が挙げられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日