企業はAI利活用でDXの教訓を活かせるか

AI-Readyを再考し、戦略的な環境整備と企業変革の方向性を考える

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2025年07月28日

サマリー

◆生成AIの登場により、企業のAI利活用の重要性が高まっている。これに伴い、AIを効果的に活用するための環境整備「AI-Ready」が急務となっている。日本では2019年以降、官民でこのAI-Readyが推進されてきたが、生成AIのビジネス活用が急速に広がりつつある2025年半ば現在、ようやくこの概念の重要性が具体的に認識されつつある。

◆ただし、企業現場では依然としてAI-Readyが不十分であるケースが多い。特に中小企業では、AI導入に向けた人材・資金・知識の不足が障壁となっており、企業規模による格差が顕在化している。また、AI導入済みの企業においても、利活用は個人や部署単位にとどまり、全社的な活用体制が整っていない状況が続いている。

◆効果的にAIを利活用するために必要となるAI-Readyは、DXを実現する上でも中核的な役割を果たす。AI利活用をDXの3つの取り組み段階にあてはめると、①デジタイゼーション(業務のデジタル化)はAI利活用に必要なデータ整備に、②デジタライゼーション(業務の効率化)はAI利活用による業務の自動化や支援に、③デジタルトランスフォーメーション(ビジネスモデルの変革)はAI利活用による価値創出や意思決定支援に通じる。AI-Readyは、これらのうちDXの土台となる①②の重要な段階を担う。

◆DX推進の過程では、企業はこれまで「業務のデジタル化=DX」と誤解し、部分最適な取り組みにとどまることが多かった。しかし、AI利活用の成功には、こうしたDXの教訓を踏まえた戦略的な推進が不可欠だ。まずは、技術導入だけでなく、経営層による全社的な方向性の提示、人材育成、組織文化の醸成といったAI-Readyの実現が求められる。特に中小企業では、DX同様にAI導入が進展しておらず、政府や支援機関による理解促進、技術支援、人材育成等、企業規模に応じた支援策の充実が急務である。AIはDXの遅れを挽回し得る技術であり、企業変革の鍵を握る存在として、本質的な変革に向けた準備と支援が求められる。

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