欧州経済見通し トランプ関税で高まるリスク

最悪シナリオは報復関税による貿易戦争

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2025年02月26日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2024年10-12月期のユーロ圏の実質GDP成長率は前期比+0.1%となり、前期から失速した。個人消費の増加基調が続いたとみられることは明るい材料である一方、外需の停滞が成長率を押し下げた。輸出の停滞が続く中、製造業の不振が経済の足を引っ張るという状況には未だ改善が見られていない。

◆かねて懸念されていた米国トランプ大統領による追加関税が実現に向けて動き出したことで、欧州経済の先行きのリスクは高まっている。既に実施が決定されている鉄鋼・アルミニウム関税の影響は軽微にとどまるとみられるものの、医薬品、自動車への追加関税や、付加価値税も考慮した相互関税が実行されれば、その悪影響は大幅に拡大する。EUにとっての最悪シナリオは、米国の追加関税に対してEUが報復関税を課し貿易戦争が激化することであり、追加関税回避に向けた協議の進展が注目される。

◆ドイツでは2025年2月23日に連邦議会選挙が実施され、事前の世論調査通り、CDU/CSUが議会第1党に返り咲いた。また、極右・AfDが第2党へと躍進したが、CDU/CSUはAfDとの協力を否定しており、第3党SPDとの大連立による政権発足が見込まれる。CDU/CSUが態度を軟化させたことで、債務ブレーキ改革への期待が高まっているが、債務ブレーキの改革に反対するAfDと、国防費の増加に反対する左派党の2党で改革の阻止が可能であり、改革実現に向けたハードルは高い。

◆2024年10-12月期の英国の実質GDP成長率は前期比+0.1%と、マイナス成長の市場予想(Bloomberg調査:同▲0.1%)に反してプラス成長となった。ただし、主な押し上げ要因は在庫増加であり、個人消費、総固定資本形成は減少しており、内容は良くない。景気減速懸念が高まる一方、インフレ率の高止まりリスクは払拭されておらず、BOEは段階的に利下げを進めていかざるを得ない。

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