サマリー
◆英国のジョンソン首相は二日間で50を超す閣僚や次官など政府要職の相次ぐ辞任により政治的な権威を失い、2022年7月7日に保守党党首を辞任する旨を発表した。首相在任期間は(同7日時点で)2年349日とメイ前首相(3年11日)より短くなる可能性がある。
◆ジョンソン首相の党首辞任表明は、実質的に保守党党首選がスタートしたことを意味する。現段階でも10名近くの候補者の名前が取り沙汰されるなど、前回(2019年)と同様に混戦が予想されている。大手ブックメーカーの予想でトップに立ったウォレス国防相はここ数カ月で与党内での支持率を高め、モーダント通商政策担当国務相やスナク前財務相、トラス外相など主要候補と目される人物を全て抑えて最有力候補につけた。2021年夏のアフガニスタンからの米軍撤退時に、難民や英国民の避難を指揮した際のリーダーシップや、ウクライナ危機での冷静沈着な対応が一般議員からも称賛されている。
◆ジョンソン首相は首相官邸前で行った辞任表明演説で、新たな党首が選出されるまで暫定首相を務める意向を明らかにした。つまりジョンソン首相は保守党党首を7月7日に辞任するものの、新たな保守党党首が決まるまでの暫定首相として在任する意向を示した。10月2日から5日までバーミンガムで開催される保守党大会までに結論は出ると考えられているが、新党首誕生までジョンソン首相が希望通り首相の座に残ることが、許容されるかは疑問である。閣僚経験者や保守党重鎮の間でも、ここ数日のジョンソン首相の言動は目に余るとし、一刻も早く首相の座から降ろすべきとの声が高まっている。多くの閣僚辞任に加えて、保守党への信頼感が失われたのも首相が原因として早期退任を促す声が止まらない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日