サマリー
◆新型コロナウイルス感染の抑制を目的とした都市封鎖(ロックダウン)はユーロ圏経済に大打撃を与え、4-6月期のGDP成長率は前期比▲12.1%(年率換算▲40.3%)とかつてない大幅な落ち込みを記録した。ロックダウンの段階的な解除を背景に、5月以降の小売売上高は明確に持ち直したが、ペントアップ・ディマンド一巡後の景気回復については引き続き不透明感が強い。米国、中南米、インドなどで新規感染者が高水準で推移していることに加え、7月半ば以降は欧州の新規感染者が再び増加に転じている。欧州各国は感染防止策を強化しつつ、全面的なロックダウンの再導入は回避しようとしているが、雇用不安が消費回復ペースを鈍化させよう。
◆英国の4-6月期のGDP成長率は前期比▲20.4%(年率換算▲59.8%)とユーロ圏よりもさらに大幅に落ち込んだ。ロックダウンの段階的な解除がユーロ圏諸国よりも遅れたためで、サービス業の中でもホテル・外食の落ち込みが特に大きい。6月から7月にかけて飲食店の営業再開や国外旅行の制限緩和などが実施されたが、欧州における感染再拡大を受けて、スペインやフランスなどからの帰国者に2週間の隔離措置を義務付けるなど、英国も経済活動再開と感染抑制の両立に苦慮している。
◆ユーロ圏、英国とも2020年下半期は景気が持ち直すと見込むが、回復ペースは4-6月期の落ち込みに比べれば緩慢となろう。ユーロ圏の成長率は2020年▲9.7%、2021年+4.6%、英国の成長率は2020年▲11.0%、2021年+5.6%と予想する。
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