サマリー
◆2020年のユーロ圏の経済成長率は+1.1%と2019年の+1.2%(推計値)からほぼ横ばいを予想する。米中の通商協議が第1段階の合意に達したこと、英国の「合意ありの離脱」が既定路線となったことは、外需の落ち込みに歯止めをかける材料である。ただし、2020年も米中に加え、英国とEU、米国とEUの通商協議が実施される見込みで、通商関連の不透明要因は残る。内需に目を転じると、就業者数の伸びが減速傾向にあり、また金融政策の追加緩和余地が限られる中で、個人消費の減速が懸念される。ユーロ圏各国の財政政策は幾分緩和的になると見込まれるが、低成長を脱するためにはその使い道も重要となろう。
◆2020年の英国の経済成長率は+1.1%と2019年の+1.3%(推計値)からやや減速すると見込む。1月末に予定されているBrexitの実現後に、最大の貿易相手であるEUのみならず、米国、日本などとの通商協議が控えており、英国がグローバル経済の中でどのような立ち位置を獲得することになるのかまだ明確ではない。ジョンソン首相は緊縮財政からの決別を約束しているが、所得税と付加価値税の増税なし、社会保険料負担の引き上げなしも選挙公約に掲げており、歳出拡大余地は限定されよう。英中銀(BOE)は2020年前半に利下げに転じると予想する。
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