サマリー
◆8月28日、ジョンソン首相は9月9日の週から約5週間、議会を停会(Prorogation)する方針を発表した。エリザベス女王は政治的に中立な立場を保つため、政府の要請をそのまま受け入れこの停会を承認した。
◆この停会で議会での審議時間が限られるため、合意なき離脱を回避するための法案通過は難しくなることは明らかである。合意なき離脱に反対する超党派の議員たちは、前日の8月27日に不信任決議の提出ではなく、ジョンソン政権に対し離脱期限の延期要請を行わせるための法案可決によって合意なき離脱を阻止することで合意したばかりであった。このタイミングでの停会決定は、まさに不意を突かれた形となった。
◆合意なき離脱、あるいは万が一離脱期限の延期となっても、解散総選挙は免れないだろう。合意なき離脱となった場合は、野党はもとより、与党内の残留派議員からも大きな反発が予想され、厳しい政権運営となるため国民の真意を問う必要が出てくる。また超党派政権が樹立されたとしても、EUが正当な理由なく延期要請を承認するかは未知数である。総選挙を実施して、2回目の国民投票を実施するといった打開の道筋をつけることが、延期承認の条件となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日