サマリー
◆2019年5月23-26日にEUの立法機関である欧州議会の選挙が実施される。当初の予定では、英国を除く27カ国での選挙となるはずだったが、英国内の離脱手続きが迷走してEU離脱期限が延期され、英国も参加する可能性が高まっている。
◆欧州議会選挙で注目されるのは、各国で存在感を増しているEUに懐疑的な政党がどこまで議席を伸ばすかである。前回の2014年の欧州議会選挙でも英国、フランスなどでEU懐疑派政党の躍進が見られたが、今回はより多くの国で議席を増やし、欧州議会の議席の3割程度に達するのではないかと予想されている。その政治的な立場はEUの移民政策を批判する極右から財政政策を批判する極左まで幅広いが、イタリアの同盟を中心に極右勢力が結束する動きがあり、特に注目される。
◆EU懐疑派政党が勢力を拡大させているのは、EU加盟国間や加盟国内の経済格差の拡大、難民・移民の増加への不満や不安に付け込むことに成功しているためである。この5月の欧州議会選挙で親EUの中道政党は過半数の議席を保持する見込みではあるが、これらの不安や不満の解消に向けたEU改革の実現が喫緊の課題である。
◆英国にとっては、今回の欧州議会選挙はEU離脱に関する国民投票のやり直しの代替策になるとの期待がある。一方にEU強硬離脱を掲げるブレグジット党と英国独立党(UKIP)、他方にEU残留を明確に主張する自由民主党とチェンジUK党が名乗りを上げているためである。しかし、世論調査では強硬離脱派の支持がやや高いものの、保守党と労働党を穏健離脱派と捉えれば、これら3陣営に票が分散される可能性が高いことが示唆されている。
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