サマリー
◆ユーロ圏の景気減速が鮮明になる中、ECBは3月の金融政策理事会で金融政策に関するガイダンスを変更し、次の利上げの可能性は2019年秋から2020年以降に先送りされた。同時に公表されたECBスタッフによる2019年の成長率予想は+1.7%から+1.1%へ、インフレ率予想は+1.6%から+1.2%へ大幅に下方修正された。消費者マインドの悪化には歯止めがかかったが、Brexit問題はいまだに着地点が定まらず、また米中協議も長期化しているなど、外需の見通しは引き続き不透明感が非常に強い。ドラギECB総裁は今後も景気の下振れリスクがあると警戒しており、ECBの金融政策は非伝統的な金融緩和の終了ではなく、継続へ軸足が変化した。
◆英国経済は2018年10-12月期に前期比+0.2%へ急減速したあと、2019年に入ってからも低成長が続いている。Brexitの先行き不透明感が一向に晴れない中で、景況感は悪化傾向にある。英下院は、メイ首相とEUが合意した離脱協定案を3月半ばに改めて拒否した一方、「合意なしの離脱」も拒否し、離脱期限の延長をEUに求めることを決議した。ただし、EUが納得できるような離脱期限延長の理由を提示できるかは、この期に及んで明確ではない。BOEはBrexitの動向と景気指標次第で、利上げにも利下げにも動く可能性があるとしているが、どちらとも決断できない期間が引き延ばされる可能性が高い。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 成長再加速の兆し
景気の下振れリスク緩和でECBの追加利下げ観測は後退
2025年11月25日
-
7-9月期ユーロ圏GDP 緩やかな成長が継続
フランスの成長ペースが加速し、市場予想からはわずかに上振れ
2025年10月31日
-
欧州経済見通し フランスの政治不安は一服
ただし予断は許されず、予算協議が次の焦点
2025年10月21日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

