サマリー
◆メイ首相は、3月11日夜にストラスブールを訪問し、ユンケル欧州委員会委員長と、EU離脱(ブレグジット)協定の最後の交渉を行い、法的拘束力を持たせる形でバックストップに関する変更を行うことで合意したと発表した。変更の内容は、離脱協定に関する法的拘束力のある共同解釈文書および政治宣言に関する追加文書により、英国がEUによってバックストップに恒久的に拘束されないことを保証するものである。
◆しかし、離脱協定が議会で承認されるかは、依然、予断を許さない。メイ首相の合意案に反対の姿勢を示していた民主統一党(DUP)は、今回のバックストップの変更を吟味する時間が必要とし、支持するかどうかについて明確な回答を避けた。またヨーロッパリサーチグループ(ERG)の強硬離脱派議員は、今回の変更が期待されていたことにはもの足りないと指摘するなど、依然、離脱協定を支持しない方向性を示した。
◆首相官邸は労働者の権利保護強化や、助成金などで労働党議員の取り込みに奔走していたものの、取り立てて成果は出ていない。仮に3月12日に否決された場合に、現実的にはメイ首相にはほとんど代替策がなく、合意なき離脱に関する議会の意思を無視し、離脱日まで時間稼ぎをして、合意なき離脱を果たす可能性も否定できないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日