サマリー
◆ユーロ圏では底堅い景気拡大が続いているとみるが、米国と中国の貿易摩擦、新興国の景気減速、原油高など外部要因に加え、Brexit交渉の難航、財政懸念に伴うイタリア金利上昇など欧州内にも先行きの不透明感を高める材料が目白押しとなってしまっている。EUの規制変更に伴う7、8月の自動車生産の急減は、9月に解消に向かったが、中国を筆頭に新興国向けの輸出の伸び悩みが目立ってきた。また、消費者信頼感は8、9月に低下傾向が加速した。ECBは10月25日の金融政策理事会で、資産買取を12月末に停止すること、ただし償還分の再投資は継続してECBの資産規模は当面縮小させないこと、2019年夏までは政策金利を据え置くことを確認すると予想される。もっとも、以上の「出口戦略」を遂行できるかは、今後の景気とインフレ動向次第であり、ECBは手探りの金融政策となると予想される。
◆英国経済は7月、8月に成長率が加速し、ユーロ圏を上回る成長ペースとなった模様である。ただし、英国とEUとの離脱交渉の合意は先送りされ、12月半ばまで決着しない可能性が高まっている。2019年3月29日の離脱期限まであと半年を切ってもなお、どのように決着するか明確でないことに対して、強硬離脱派、穏健離脱派、さらにはBrexit撤回要求派がそれぞれ不満を強める展開となっている。BOEは「大きな混乱なくEU離脱が実現」すれば追加利上げに動くと予想されるが、Brexitの先行きが見通せるまで、動くことは難しいだろう。
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