サマリー
◆6月に誕生したイタリアのポピュリズム連立政権が初めて取り組む来年度(2019年度)予算案の枠組みが明らかになるにつれ、金融市場は警戒を強めている。予算編成プロセスは、閣議決定された経済財政計画を9月27日までにイタリア議会に提出することで開始される。
◆異なる選挙公約を掲げた政党同士が連立を組むことになったことが、予算案編成が難航している理由のひとつである。政権公約を全て実現した場合の歳出拡大は1,000億ユーロを超え、財政赤字は対GDP比で3%を大きく上回る。連立政権は、公約実現のため、医療、教育および研究開発分野を除き歳出をカットし、政府支出の見直しを検討しているとの報道もあるが、改革をせずマーストリヒト基準を超えた予算案がそもそもEUに承認されることは困難である。
◆連立政権は、最近になってようやく金融市場の動揺を抑えるメディア対策が少しでき始めたようだが、両党とも地方政党の感覚が抜けず、一挙一動が金融市場に影響を与える自覚が乏しいともいえる。予算案が、国民の支持を求める政権与党にとって重要問題となっている今、他のEU加盟国との衝突は不可避ともいえ、今後の連立政権の動向次第ではユーロ危機の再燃も警戒される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日