サマリー
◆2017年6月19日に開始されたブレグジット交渉は10月で既に5回目となる。しかし交渉は暗礁に乗り上げていると見る向きも多く、英国・EU双方が歩み寄ることは難しいとされる。11月9日、10日に実施される第6回交渉では、離脱協定の重要課題である「手切れ金」に対するアプローチ(金額・計算方法)が合意に至るかが焦点となる。
◆また移行措置交渉の行方も大きな懸念であろう。メイ首相は9月22日のフィレンツェの演説で移行措置の設定をEU側に求めた。英国産業界は、2017年12月末までに、少なくとも2年間(現状維持)の移行措置設定で合意することを要求している。しかし10月19日、20日に開催されたEUサミットで、独仏が主導する一部の加盟国は、移行措置交渉の迅速な開始を拒絶している。こう着状態を打開したと思われたメイ首相の演説であったが、迅速な移行措置協議開始への期待が砕かれた結果となっている。
◆ただ今週予定されている6回目交渉直前の報道では、「手切れ金」についてメイ首相が、EU加盟国としての相応の負担額(EU予算への分担金、年金コスト等)を拠出することで調整しているとの見解を報じる一部のメディアも存在する 。シティの金融機関の中には、この一連の報道の内容に関して官僚等へのヒアリングによりある程度把握した上で、(離脱後の金融サービスの継続性が出てきたことから)、国民投票直後に打ち出した大規模な従業員や業務のEU加盟国への移転計画についてのトーンを修正しつつある企業もあるという。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日