サマリー
◆8月28日から31日までの第3回のブレグジット協議を終えた記者会見でバルニエEU主席交渉官は、交渉に決定的な進捗が見られないと発言し、難航する交渉に対する不満がEU英国双方で高まっていることをうかがわせた。英国とアイランド間の共通旅行区域など二次的な分野である程度の動きはあったと認めながらも、「手切れ金」やEU市民の権利について信頼関係が構築できていないことが示唆された。
◆また英国政府は第3回以降の交渉のために、将来のEUとの関係性についてのブレグジットの方向性を明らかにした政策文書を7本発表している。EU側は交渉指令案として離脱協議の指針を5月3日に発表していたものの、英国は明確な方針を示していなかったため長く発表が待たれていた。しかし、具体性に欠ける内容に英国側の準備不足は否めない。
◆英国進出日本企業が、最も期待しているのは2019年3月のブレグジット後の移行期間の設置であろう。英国がこれを確保できず、パスポート制を失えば、企業および各業種の規制当局双方にとってより多くのコストや煩雑さが生じる恐れがある。ただ、移行期間の設置は、国民投票からかなりの年数が経過している時点でもEU法の下にあることについて、保守党EU懐疑派議員を納得させる至難の業となる。
◆現欧州議会のブレグジット交渉の調整役であるフェルホフスタット氏は、英国メイ首相が9月21日に演説を行うことで、(ブレグジット交渉に対して)重要な介入を行うと発言した。これにより、交渉に影響を与える可能性があるため、9月18日の週から予定されていた、第4回のブレグジット交渉が延期される可能性があることを示唆している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日