サマリー
◆4月18日に突然、メイ首相が総選挙実施を発表した直後には、保守党は24%ポイントにリードを広げており、圧倒的勝利で政権基盤を固めるとみられていた。ただ5月下旬に発表された保守党マニフェストのソーシャルケア政策の不人気により、与党保守党と労働党の支持率の差は5月31日の時点で、3%ポイントにまで縮小している。総選挙を数日後に控え、保守党支持率の急落と選挙後の存続すら危ぶまれていた労働党の躍進に対し、金融市場は解釈に苦しみ、世論調査結果の発表の度に大きな変動を示している。
◆6月3日夜に起こったロンドンブリッジおよびバラマーケットでの襲撃テロ事件の影響により、総選挙の延期も懸念されていた。4日朝の会見でメイ首相は民主主義がテロに屈しないことを強調し、選挙は予定通り実施すると発表した。ブレグジットの交渉過程や工程表、企業や個人に及ぶ影響などが争点になると思われていた選挙戦だが、医療や社会保障、テロ対策等の安全保障といった国内政策に焦点が移っている。メイ首相はブレグジットに有権者の関心を戻そうと必死だが、唯一の懸念はブレグジット以降、EU域内でのテロ対策の安全保障情報をどのように収集するのかという点ともいわれている。
◆英国総選挙の結果が金融市場に悪い影響をもたらすシナリオとして、労働党が過半数議席を獲得し単独で政権に就くケースが挙げられる。コービン党首率いる労働党は左傾化が著しいうえ、(鉄道やエネルギー会社の再国有化など)70年代の古い労働党に回帰したかのような、増税による公的支出拡大を掲げ、経済の不透明性は増大するといわれている。また最も混乱が生じるのは、保守党が第一党となるものの、単独過半数にまで届かずハングパーラメントとなるシナリオであり、政治面でも金融市場でも大きな混乱が予想される。
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