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ハード・ブレクジットで孤立する英国

金融機関は2017年第1四半期から英国からの業務移転を画策

2016年10月25日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

サマリー

◆10月20日-21日の日程で開催されたEUサミットは、英国がEUから孤立する状況が鮮明に示された場となった。メイ首相は、英国がEUを離脱するまでは、欧州の会合や意思決定において引き続き中心的な役割を果たしたいと発言し、多くのEU 首脳の反発を買った。スコットランド民族党(SNP)のスタージョン党首は、このまま(単一市場へのアクセスを確保できず)ハード・ブレクジットへの道を選ぶのであれば、スコットランドは再度独立の住民投票を辞さないとし、第2次投票に関する法案提出を党大会の演説で約束した。


◆リスボン条約50条は、「加盟国は憲法の手続きに従って離脱する」との記述のみで、明確なプロセスの定義はなく、議会採決が必要か否かは各国の判断に委ねられている。一方で、50条行使に議会採決の是非を問う司法審査が英国高等法院で行われており、政府代表の弁護団が、50条行使を含むEU離脱に関するあらゆる取り決めについて、議会採決をする必要性が高いと発言したことが波紋を呼んでいる。


◆WTOのような協定がない金融サービスは、仮に2017年初にリスボン条約50条を行使した場合、2年後の2019年初以降にEUパスポートが失効した時に業務停止のリスクを抱えることとなる。これに対処するために、シティに欧州本店を置く金融機関は業務遂行のコンティンジェンシープランの策定を急いでおり、2017年第1四半期から本格的に英国から他のEU加盟国へ業務移転をスタートさせる意向を示しつつある。英国政府が迷走する状況に嫌気が差し、英国からの撤退・移転を検討する企業がさらに増加する可能性も高く、一刻も早い政治的な安定とブレクジット後の方向性の提示が待たれている。

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