サマリー
◆ユーロ圏の1-3月期のGDP成長率(速報値)は前期比+0.5%で、2015年10-12月期の同+0.3%から予想外に加速した。需要項目別の内訳は6月7日のGDP確報値の発表を待たなければならないが、内需が牽引役となって外需の不振を補ったと推測される。続く4-6月期は暖冬による建設投資拡大など一時的な押し上げ要因が剥落して減速が見込まれる。また、6月23日の英国の国民投票の行方が不透明であること、外需が伸び悩んでいることなど景気下振れリスクが存在する。ただ、雇用改善、低インフレなどユーロ圏の個人消費に対する追い風は継続しており、緩やかな景気回復の継続がメインシナリオである。1-3月期の成長率が予想を上回ったため、2016年通年のユーロ圏のGDP成長率の予想を先月の+1.2%から+1.5%へ上方修正した。ECBも景気には下振れリスクがあるとしつつ、緩やかな回復が継続し、インフレ率も年央には上昇に転じると予想している。その予想を現実のものとするために、ECBは3月に決定した社債購入プログラムなどの追加緩和策を含む金融緩和を計画通り実行してゆくと予想される。
◆英国の1-3月期のGDP成長率(速報値)は前期比+0.4%と、2015年10-12月期の同+0.6%からやや減速した。6月23日の国民投票の行方が不透明なことが、英国景気の減速要因となりつつあると判断される。企業部門の景況感は製造業のみならず、建設業、小売業、サービス業もここ数カ月冴えない展開であり、英国経済は4-6月期に一段と減速すると見込まれる。この景気減速は、EU離脱のリスクを訴えるEU残留派にとって追い風となり、6月23日の国民投票ではEU残留が選択される可能性が高まるのではないかと予想するが、予断はできない。万一、EU離脱が選択された場合、英国経済の悪化が懸念されるが、他方でポンド急落がインフレ要因となる懸念も小さくない。BOEは景気対策として利下げするべきか、インフレ抑制のために利上げするべきか困難な選択を迫られる可能性がある。
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