スペイン総選挙の注目点と経済の課題

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2015年12月10日

  • 経済調査部 研究員 新居 真紀

サマリー

◆12月20日にスペインで任期満了に伴う総選挙が実施される。12月に行われた最新の世論調査によれば、マリアノ・ラホイ現首相率いる保守派の国民党(PP)が最も優勢となっており、二位に最大野党で中道左派の社会労働党(PSOE)がつけている。これに続くのが新党で中道右派のシウダダノスで、同党はここ一年で支持率が急上昇しており、今回の選挙における注目点の一つとなっている。一方、新党で左派のポデモスは2015年初めをピークに支持率は伸び悩んでいる。こうした状況下、いずれの政党も単独での過半数獲得は難しい状況にある。


◆スペインの実質経済成長率は2012年4Qに底を打って以来好調であるが、現ラホイ政権は単独政権を維持するほどの支持を得られていない。その理由の一つに、失業率や財政等が依然として金融危機前の水準まで改善しておらず、国民がこれまでの緊縮策の成果を実感できていないことがある。


◆単独政党による安定的な政権運営が続いてきた同国にとって、連立の実現可能性は未知数である。EUの統合深化や、緊縮政策を続ける中でどれだけ経済成長を促す政策の度合いを高めるかといった面で、各党の温度差を埋めることは次期政権にとって厄介な問題となる。総選挙結果とその後の政権樹立への動向が注目されるが、安定的な連立政権の実現には各党の歩み寄りが必要となりそうだ。

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